須通り
Sudo Masaaki official site
For the reinstatement of
population ecology.

全米が泣いた。読者からの熱いメッセージが続々と

母が泣いたのを20年ぶりにみました(京都府・女性)

駐車場になった生家をおもいだしました(大阪府・女性)

今のこどもたちに是非読んでほしい

逆境にもめげず、頑張っている弟の姿に感動しました(京都府・男性)

きっとキツネさんにも事情があったのだと思います(伏見区)

Crazy.(ベルギー王国)

これまでの、ちょっといい話

読者視点でいい話かどうかは関知しない

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#016 (2018年2月10日~)

みっちゃんが顔を出すなり、御託はいい、上等なコーヒーを飲ませてよ、と。だから僕は教えてやったのさ。喫茶店のは薄いから美味しくない、そもそも高い豆なんて半分は個人的嗜好の問題だし、残り半分は思い込みなんだ。そこにインスタントの袋があるだろう、未開封のやつ。封を切って嗅いでみろ。それが万人に支持されるコーヒーだ。いかなる単一の農園も作り出せない香りと味なんだ。

#015 (2017年5月5日~)

空色の卵は空の色と見分けがつかないから、しばしば鳥や飛行機が衝突して割れてしまう。そうして生き残った空色の卵からは空色のひよこが孵るが、やはり空の色と見分けがつかないから、親鳥が餌を呉れなくて育たないことがある。だから近年はめっきり数が減ってしまったけれども、それでもまだ空の色が空色に見える程度には、多く生息している。

#014 (2017年4月24日~)

オリハルコンの巨体がガシィン!と軋んだ音を立て揺らいだ次の瞬間辺り一面に土煙が立ち込めオペレータの銀河兵士たちが蜘蛛の子を散らすように駆け去っていった。ぼくは落ち着いた心境で単装重量子砲の引鉄をひいた。つい先程まで地上人を殲滅せんと強固な意志を持って動いていた兵器は、虎が変じたバターに熱したナイフを通すが如く、いまや胴体の中央やや後ろ寄りで真っ二つにされて綺麗な断面を晒していた。

#013 (2016年6月15日~)

キャッチボールは野球の練習に過ぎないがドッジボールはそれ自体が競技である。すなわち会話のキャッチボールよりも会話のドッジボールの方が実効性を伴う行為なのだよ。

#012 (2014年3月31日~)

余談だがクラリネットの楽譜を「しぃ~っ」と書くと実際の音が「べぇ~っ」と鳴るので、「べー」管と呼称するのである。

#011 (2013年11月1日~)

彼の呪われた地の真ん中には大きな湖があって、悪い竜が棲んでいる。金色の鱗がぴかぴか照り返すのが、晴れた日には岸辺の町からも見える。

#010 (2013年9月21日~)

彼らは医療技術の発達した未来に解凍されて難病治療を受けることを目論んでいたんだが、まあ医療費を誰が負担するのかという問題が生じてね。冷凍保存業者が破産すると同時に、連中の命運も尽きたというわけだ。既に大部分のサンプルは、意識レベルを上げないように組織解凍されて、そのまま実験に用いられたよ。顧客ではなく、21世紀初頭の人類の特徴を保持した生体材料として。

#009 (2013年7月15日~)

今日きょうたのしい遠足えんそくです。昨日きのうまではずっとあめだったので心配しんぱいでしたが、クラスのみんなでおおきなてるてる坊主ぼうずつくりました。生身なまみ人間にんげんをいれると効果こうかすといたので、となりのクラスのみっちゃんをつかまえてしんにしました。社会しゃかい幸福こうふく犠牲サクリファイスかせないそうです。

#008 (2013年6月22日~)

「おれ、春になったら東京に出て正社員目指すんだ。そしたら弟や妹たちに腹いっぱい食わせてやれるんだ」
「そうは言うがな、都民戸籍の申請費に80万、身上確認に5ヶ月掛かるんだぞ。その間は仕事にだって就けやしない。当てはあるのか?」
「なぁに心配いらねえ。都門に着いたらブローカーと接触する手筈になってんだ」
そういえば最近、あいつ連絡してこないな。

#007 (2013年5月6日~)

かわいい子犬
かわいそう
庭の柱に繋がれて
ほら
瑠璃色の蛇が
芝生の波を漕ぎ寄せ来るよ

#006 (2013年3月21日~)

見にくいアヒルの子がおりました。ある日、お母さんアヒルが出かけた隙に悪いキツネがやってきました。逃げ惑うアヒルをキツネは執拗に追い回し、たくさんいた兄弟たちは、一羽また一羽と平らげられてしまったのです。
でも、見にくいアヒルの子だけはキツネに発見されなかったので、食べられずに済みました。こうして、捕食者に見つかりにくい色のアヒルが次第に多くなっていったそうです。おしまい。

自然選択説 - Wikipedia

#005 (2013年3月14日~)

人知れず咲く花はあるのだろうか。さぞや美しい花なのであろうか。人知れず咲く美しい花を見逃してしまうのは、悔しいことだ。

#004 (2012年10月12日~)

せめてこの子だけはと泣きすがる女の肩を突き飛ばし、地球脱出のシャトルに乗り込んだ。後2, 3時間もすれば青い惑星の終末が訪れる。種としての人類を存続させるべく、僕は選ばれた存在なんだ。

#003 (2012年9月5日~)

病気で寝込んだ弟の薬を買うために、やっとの思いで見つけたアルバイト。ある日視察に来た社長夫妻は、以前に父から家を騙し取ったキツネでした。
「あいつら、とっ捕まえて狐汁にしてやる」心の奥底、暗い感情が湧き上がります。帰宅するキツネの後を尾けていくと、向かった先は案の定、僕たちが住んでいた懐かしいあの家だったのです。そっと塀越しに中を覗きますと、可愛らしい子狐たちが、戻ってきた両親の膝に飛び付いているところでした。僕は足早にその場から立ち去りました。

#002 (2012年8月2日~)

父さんが悪いキツネに騙されて、家の権利を手放したのが二ヶ月前。代わりに宛がわれたのは山腹の小さな洞穴。
もうじき雪も積もり始めますが、僕たち一家は元気に暮らしています。最近、弟がコンコンと咳き込むようになりました。

#001 (2012年6月24日~)

かつて一切れのパンを得るために弟を売り飛ばした姉がいました。彼女は私にぽつりと漏らしました。
「あのときの選択は間違っていたのでしょうか」
私は答えました。
「そんなことはありません、あなたの命弟の命の価値は平等なのです。だったらあなたの命+パン弟の命を比べたとき、どちらの価値が大きいか、分かりますね?」
それを聞いた彼女の顔は、どことなく晴れやかでした。