須通り
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2014年3月25日 開始
2014年6月2日 更新
2014年9月10日 記事追加

このページ内の目次

  1. LilyPond概説(2014.03.25)
  2. LilyPondの導入方法(2014.03.25)

ホーム | 雑記トップ | 特集「LilyPondで吹奏楽」

GNU LilyPond
meets wind music

本特集はLilyPondを用いた楽譜組版において、2014年現在ネット上の日本語情報でとりわけ不足している部分、すなわちデータの入出力方式、高度なレイアウト制御、および吹奏楽・オーケストラ編成の総譜に代表される大規模プロジェクトの構築手法に関する、包括的な解説を提供するものです。個別の言語仕様は公式サイトのリファレンスマニュアルを参照してください。

分割されたページ

LilyPond概説

GNU LilyPondは、テキストベースの楽譜浄書システムである。コンセプトとしてはTeXに近く、高品位な楽譜組版データを出力できる環境を、あらゆる主要なプラットフォーム向けに、無料で提供することを目指している。

皆さんは楽譜作成ソフトと聞いて何を思い浮かべるだろうか。Fin●leやSib●liusといったプロプライエタリなノーテーションソフトか。MuseScore等のフリーな楽譜エディタだろうか。あるいはCub●seやL●gic Pro、Rosegarden等のDAWだろうか。それらとLilyPondの最大の違いは、LilyPond本体はGUIを持たず、むしろ存在としてはプログラミング言語に近い点にある。楽譜を記述するソースコードはUTF-8フォーマットのテキストファイルであり、ユーザーは音符や発想記号、歌詞に対応するコマンドを自らの手で記述する。これをコンパイルすることにより、楽譜をPDFやPS、SVG、PNGといった形式でデータ出力できる。

最初に断っておくが、LilyPondは「作曲」の序盤・中盤で持ち出すツールではない。すなわち、空の五線紙上に音をスケッチしては消し、ピアノやMIDIプレイバックで試奏しては戻り、といった試行錯誤とは相性が悪い。ソースコードを書いてコンパイルする手間を考えると、あくまでアレンジが煮詰まった後、完成版の楽譜を浄書する段階で用いるべきである。なんと面倒な、と思われるかもしれないがLilyPondが出力する楽譜は、その骨折りに見合うだけの美しさを備えているということで納得していただきたい。

一応、LilyPondの優れた浄書エンジンをGUIから使えるようにするフロントエンド、例えばDenemoやFrescobaldiといったエディタソフトが開発されている。これらを用いればツールパレットからオタマジャクシを掴んで五線譜をクリック、といった方法で楽譜を入力できる。あるいは、他の楽譜作成ソフトからlilypond形式のソースファイルを出力したり、MusicXMLを初めとする共通ファイルフォーマットを介することで、楽譜データをLilyPondへインポート出来なくもない。これらのデータ受け渡し方法はまだ未成熟ではあるが、自らのオリジナル楽曲をGUIベースで手軽に美しいスコアやパート譜に昇華させられる。方法の詳細は後述する

LilyPondの導入方法

公式サイトのダウンロードページに本体の入手法、主要なOS(Windows、Mac、LinuxおよびBSD系UNIX)へのインストール手段は記載されている。特にWindows向けのインストールは、最新版インストーラのexeファイルを落としてダブルクリックするだけなので何ら問題は無い。

MacOS X環境への導入について、少しこの項で説明しておこうと思う。筆者が現在常用している環境は、TeX用テキストエディタの一種であるTeXShopから、拡張機能を用いてLilyPondエンジンを呼び出すものである。

MacOS XのTeXShopへのLilyPond engineの導入方法

最初に、LilyPond本体を導入。公式ダウンロードページから、最新版のパッケージファイルを選んでダウンロード。bzip2形式で圧縮されているので解凍し、出てきたLilyPond.appを「アプリケーション」フォルダへドラッグすればインストール完了。

さらにTeXを全く使ったことの無い人は、以下のwebページを読んでMacTeXを導入。
http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/texwiki/?Mac
このMacTexというツール群の中に、TeXShopも含まれている。

次いでTeXShopでLilyPondを扱うためのエンジンを以下のサイトからダウンロードし、インストール
http://sole.dimi.uniud.it/~nicola.vitacolonna/software/lilypond-texshop/
基本的には付属の説明文を読んでその通りにファイルをコピーするだけ。

(インストール手順の原文)
Installation
Copy LilyPond.engine, LilyPond-Book.engine and convert-ly.engine into ~/Library/TeXShop/Engines. Close and re-open TeXShop. The engines should now be available in TeXShop's drop-down menu.

Usage
Open a .ly or .lytex document, choose an engine and typeset! The LilyPond engine is meant for “pure” LilyPond documents (it runs lilypond). The LilyPond-Book engine is meant for mixed TeX/LilyPond documents (it runs lilypond-book). The convert-ly engine just runs convert-ly.

(勝手に日本語訳)
インストール
LilyPond.engine、LilyPond-Book.engine および convert-ly.engine の3つを ~/Library/TeXShop/Engines. にコピーする。TeXShopを一度閉じて開き直すと、ドロップダウンメニューからこれらを選べるようになっているはず。

使用法
拡張子 .ly もしくは .lytex 形式の書類をTeXShopで開き、メニューからエンジンを選んでタイプセットのボタンを押すだけ。LilyPond エンジンは「純粋な」LilyPond形式の書類に対して用いられる。LilyPond-Book エンジンはTeXとLilyPondの記法が混在する書類に用いられる(lilypond-bookコマンドが実行される)。convert-ly エンジンは単にconvert-lyコマンドを実行する。

注意

  • 「~/Library/TeXShop/Engines.」のフォルダへは、MacOS XのFinderからは直接辿れない。「ライブラリ」という名前のフォルダはMacintosh HDの直下にもあるが、こちらではなく「(ユーザー名)」の下にある方のライブラリを探す。
  • 具体的には、Finderのメニューから「移動」>「フォルダへ移動...」として、「フォルダの場所を入力」という窓が出るので ~/Library/TeXShop/ と入力してください。
  • 初回のタイプセット時に数分待たされるので注意(おそらくシステムに入っているフォントのインデックスを構築しているため)。以下のメッセージが出て数分止まるので、パスが通ってないのでは?と邪推してしまうが、気長に。
    Feeding hogehoge.ly to lilypond... Please wait...