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なぜ泥棒猫とは云ふのに泥棒犬とは云はないのだらうか

ホーム | 雑記トップ | デジタルカメラに求める条件(2016年6月編)

前回(2012年3月)の壮絶なコンペを勝ち抜いたのはCanon S100であった。なんとも頼もしい戦友だったが、丸4年間掛けて文字通り「使い潰し」てしまい、泣く泣く買い替えることにした。あくまで本稿に書いてあるカメラの選択基準は、個人的都合のみに基づくものなので、鵜呑みにしないように。

2012年春のカメラ界と2016年のそれを改めて見比べると、あたかも製品開発のベクトルが反転したかのような印象を受ける。もちろん、そこに至るまでにはスマートフォンの台頭があり、前回時点でもコンデジ市場の下半分は既にごっそり削られていた。日常のポートレートがスマホで十分ならば、わざわざカメラを持ち歩く理由はどこに在るのだろう。カメラメーカーが打ち出した方向性は「大型センサー」と「マニュアルの操作感」による差別化だった。畢竟、機体サイズは大型化し価格もうなぎ上りだ。筆者が望んだ方向で機能が充実しつつある反面、このままどんどん高コスト化した挙句、コンデジというジャンル自体が富裕層向けのおもちゃに押し込められないか、心配でもある。

といったイントロを踏まえて、もはや恒例となった要求仕様の発表から。なお極めて個人的な事情を断っておくと、今回のカメラ選びにおいて「高画質」は必ずしも絶対条件ではない。実のところ当方はDP2 Merrillという変態カメラを所有しており、多少かさばるのと暗所や逆光に弱い点を除けば文句のつけようがない真の高解像度を得られる。なので目指す所は、四六時中ザックの前ポーチで持ち運んで「思い立ったら3秒でパシャリ」を可能にする機動力だ。

絶対に満たすべき仕様

  1. ポケットに無造作に突っ込めるサイズ
  2. 高感度(ISO1600以上が実用になる)
  3. マニュアルフォーカス
  4. シャッタースピード優先AF
  5. 広角対応(35 mm換算で28 mmから、できれば24 mm)

2016年現在、各メーカーが1型や1/1.7型といった(コンデジとしては)大型センサー搭載機をラインナップに取り入れており、これらを選んでおけば基本性能は鉄板だろう。しかしハード面での好ましくない影響として、サイズと重量の肥大化が筆頭に上がる。特に各社ともフラッグシップは軒並み背が高くなり、さらにマズいことに厚みが増している。標準ズームなのに厚さ 4 cm台後半ともなると、さすがにポケットがパンパンに膨らんでしまう。 またカメラを筆記具として使う場合は、センサーがデカイと逆にパンフォーカスで撮りにくかったり近くに寄れなかったり(1型センサー機の近接撮影は、本当に笑えるほどピントが合わない)という弊害も出てくるので、素子サイズ=絶対善ではないことは述べておく。

肝心の高感度性能はというと、2012の時点では、ISO1600で観賞用の写真が撮れるコンパクトカメラなんてものは滅多になかった。盛大にノイズが乗っているか、デジタル処理の結果のっぺりした油絵調の絵を出してくるかの2択である(S100は明らかに後者で、この万能カメラの唯一の欠点だった)。ところが近年の技術進歩は目覚しく(人心はさらに荒廃した)、もはやカタログスペック上はISO 12800とか25600とか、スカウターが壊れそうな数字が踊っている。
実力はどの程度か。幸い既存製品については、ネットのレビューサイトで実写サンプルを調査できる。驚くべきことに、決してハッタリではなくISO3200やISO6400が、PCモニタでの鑑賞に耐えるレベルで出力されているようなのだ。さらに一眼の高級機やムービーカメラでは、SやCといった会社がこの1, 2年ほど超高感度モデルを続々と発表しているので、普及価格帯の方でも今後の伸びしろはあると見て良いだろう。

マニュアルフォーカスは前の記事で書いたように、暗がりで強制的にシャッターを切るための保険という要素が強い。この点については2012年と比べて近頃は大幅に改善された、というよりもカメラメーカーが追い詰められた結果、ピントリングを備えていない廉価なカメラが市場から淘汰されてしまったというべきか。まあ、近年のカメラの暗所AF性能は目に見えて上がっているので、そのうち全部お任せでも一向に構わない時代が来るかもしれない。

画角については、大体のズーム機種が広角側で換算28 mmに対応しており、それなりのケースで24 mmも使えるといった具合である。標準レンズかつ趣味要素の強い単焦点カメラがしぶとく生き残っている一方、魚眼などのピーキーな画角を持った機種が見当たらないところを見ると、本当の特殊撮影をしたい人は既に一眼やミラーレス、あるいはアクションカメラに流れたのだろう。かたやテレ端も4倍とか5倍とか10倍とかいった具合に、まあ常識的に中望遠までカバーしているが、問題は先も述べたとおり最近のコンデジが全般に「厚く」なってきている点である。ズーム倍率を欲張ると、直ちにサイズ面での条件を超えてしまうので要注意。あと単純な話、ズーム倍率が高すぎると起動やシャットダウンにおけるレンズの繰り出しに時間がかかり、カメラの即応性が失われる。そのせいで今回の機種選定では実際に、本命視されていた某P社が店頭で脱落した。

無理にとは言わないが欲しい

  1. 防水
  2. ファインダー

防水

防水を条件に加えた時点でカメラの選択肢が極端に狭まってしまうのは以前と変わらず。いわゆる高級コンパクトで防水になっているカメラが40万円のラ○カだけという状況で、シャッタースピードを決めて撮れる機種もEVFを備えた機種も見当たらないからである。で、フィールドワークに使える防水カメラとなると、現状マイクロフォーサーズのフラッグシップ機が最適解に思えてくる。なので降水時の撮影は一眼に任せたいのだが、例によって筆者が慢性的な金欠状態ゆえ其のようなシステムを組めるに至っておらず、雨の日はひたすら布団被って寝ています。

ファインダー

デジカメの行く末について嘆いていた数年前、コンデジから光学ファインダーがほぼ駆逐された頃だった。前の記事でも「無理にとは言わないが欲しい」項目である。当時のEVFはミラーレス用の装備と見られていたが、その後スマートフォンに対する高級コンデジの差別化要素として、各社がこぞって搭載し始めた。潮目が変わったのだ。個人的には嬉しい誤算である。

4年間S100で頑張ってみた感想として、やはりファインダーの要否を決めているのは、飛行物体を狙うか否かである。自動車だろうがキハ40だろうが、はたまた三毛猫であろうが、対象が地面を移動する限り、移動予測範囲は1次元(カメラを右に振るか左に振るか)である。最悪、パンしながら連写すればなんとかなる。
だが鳥や有翼獅子の類は、空間的には3次元に、カメラ目線では2次元平面上を自在に駆けまわる。大体の場合は肉眼で被写体を見つけ、目を切らないようにカメラを下から差し込んでファインダーに収め、シャッターを切る。背面液晶でこれに匹敵する動きを身につけることは、筆者には終ぞ出来なかった。きっと人類全般に困難であろう。

画素数について

2000年代を通じて各社がデジタルカメラの高画素化競争に邁進する姿を、筆者は冷ややかな眼で見ていた。だって撮像素子のサイズから言っても、当時の貧弱なプロセッサから言っても、表現力を無視して画素を増やすという販売戦略は自滅ルートにしか見えないんですよね。

かたや鑑賞用のPCモニタの解像度といえば、当時は1024✕768や1280✕800、ようやくFull HDが出てきた世界である。明らかに需要を無視して、画素数というベンチマークだけが独り歩きしていた。

最近の動向として、スマホのカメラは800万画素程度、コンデジも1200ないし2000万画素程度まで増えた所で落ち着いたように見える。むしろ、4Kや8Kでの映像制作現場に対応を迫られるプロ用機材が、ここ1, 2年は超高解像度の世界を牽引しており、まあ真っ当な路線に戻ったというべきか、アプローチの限界に達したというべきか(要するにセンサーの画素ピッチが細かくなりすぎて、むしろ光学系が足を引っ張っている)。

なお4Kテレビの解像度が3840×2160だから、本格的な製作用途で画面解像度の2倍の寸法が必要とされるプロっぽい人を除けば、800万画素クラスのスマホのカメラで十分という見方もできる。

「デジタルカメラ・機種選択編そして戦慄の結末へ」は、現在鋭意執筆中です